安全な取引のポイント

1.購入計画を立てる

(1)資金計画

マイホームの購入を決めたなら、まず資金計画を立てることが重要です。

「頭金」は3割を確保しよう
頭金は一般的に物件価格の2割程度が目安と言われていますが,できたら3割を確保したいものです。
なぜなら公庫はもちろん銀行ローンも購入価格の8割程度を融資限度としているところが多いので、必然的に2割は用意しなければなりません。しかし、マイホーム購入時には諸費用がかかることを忘れがちです。 諸費用には次のようなものがあります。

* 税金(印紙税、登録免許税)契約書作成、登記の時にかかる。

* 保険料・保証料(ローン保証料・団体信用生命保険料・特約火災保険料・特約地震保険料)
  一時的にローンが支払えなくなった時の保険や、死亡等の場合に支払ってくれる保険。

* 手数料(ローン手数料・司法書士報酬・仲介手数料)
  仲介手数料は「仲介」「媒介」と記載されているものには基本的に必要となる。
  金額の上限は「物件価格×3% +6万円」(消費税別)。

(2)住宅ローンの種類

住宅ローンには公的融資として「住宅金融公庫融資」「年金住宅融資」「財形住宅融資」「自治体融資」があり、民間融資として民間の銀行・生命保険会社等があります。
住宅金融公庫融資と年金住宅融資の場合は、毎月返済額の5倍以上の月収が必要です。

また購入する物件によって申し込む融資が異なり、金利や返済期間、融資額、利用できる特別加算制度も違うので注意してください。

提携ローンは業者があらかじめ金融機関と提携契約を結んでいるもので、物件価格の9割を超えるローンを借りられる場合もあります。

(3)買換えする時

買換えにより新規物件を購入しようとする時は、原則として今すんでいる住宅の売却を先行することをお薦めします。新規物件の購入後も売れない時には困ったことになります。

また、手持ち物件が売れない場合に備え「買換え条項」といわれる特約付きの売買契約をし、売却できない場合には白紙に戻る条項をつけておくようにすると良いでしょう。

2.物件情報を収集する

住宅を購入するときは、まず住宅情報誌・不動産広告・折り込み広告で不動産情報を収集することから始まります。興味ある不動産会社があれば、友の会に入会することも情報キャッチの方法です。

しかしながら、住宅販売の世界では「オトリ広告」「違反な広告」が有り、悪質な業者が後を絶ちません。このため不動産の広告や販売には一定の法律があり、購入者が不利な条件で契約したり、不公正な広告を助長することの無いよう決められているのです。

その代表的なものが次の3つの法律です。

宅地建物取引業法
宅地建物の取引業を行うには宅建業法の免許が必要です。 また不動産の広告や取引を始めても良い時期、広告に記載すべき事項取引の手順、掲示すべき事項、重要事項の説明などが定められており、罰則も定められています。
景表法
不当景品類および不当表示防止法といい、不動産以外にも広告全般を規制している法律です。 誇大広告や虚偽の広告を規制し、違反すると公正取引委員会から排除命令を受けます。
不動産の表示に関する公正競争規約
不動産業界の自主規制のルールで、違反すると訂正広告や回収を命じます。 この警告に従わないときは公正取引委員会に排除命令等の法的措置を求めることができます。

このように折り込みチラシから販売方法に至るまで、本来はこれらの法律で適正に行われるように定められているのです。
しかし購入者がこのような仕組みや規制を十分知っていることが少なく、また広告表現の解釈にも微妙なところがあることから次のように悪徳業者のつけ入る隙があるのです。

オトリ広告
優良安価な物件のチラシを見て来た客に「その物件は昨日売れました」と言い、別の物件を進めて買わせる。
建築条件付宅地
土地・建物合計額で建売りのように表示されていますが、小さいため建築条件付きとわかりにくく表示してある広告。建築条件付宅地は土地の売買契約後3ヶ月以内に建物請負契約が成立しない場合は白紙に戻すのですが、土地・建物の同時契約をせまる内容になっていることがあります。
建築確認を取っていないのに嘘の建築確認を記載する。
掘り出し物・厳選・最高・絶対などの表現がある広告。
広告写真やイラストは商品としての建物を魅力的に描くことが目的なので、欠点や短所は表現しないか目立たないように描かれています。

はやる気持ちをおさえて、冷静に広告をチェックしたいものです。

3.物件調査をする

気に入った物件があったら資料を請求し、現地を調査しましょう。

不動産会社もチェック
ディベロッパーも大規模な開発を得意とするもの、小規模開発を得意とするもの、マンションを得意とするもの等さまざまです。
そして購入を成功させるには間違いのない不動産会社や販売会社を選ぶことが不可欠です。この段階で不動産会社や販売会社と接触することになりますので、会社や営業マンの対応、信用度を確認しましょう。
更に詳しく業者を知りたかったら、各都道府県の担当課で不動産業者名簿を閲覧できます。その名簿で概ね次のようなことがわかります。

* 社長・役員の名前や過去の履歴

* 過去3年間の営業実績

* 過去3年間の決算報告書、納税証明書

* 過去に処分を受けた場合は処分歴

不動産業者名簿を閲覧できる場所

閲覧窓口 所在地 連絡先(直通)
東京都住宅局不動産業指導部指導課 新宿区西新宿2-8-1(都庁第2庁舎3階) 03-5320-5071
神奈川県都市部建築指導課 横浜市中区日本大通 045-201-1111
千葉県都市部宅地課 千葉市中央区市場町1-1 043-223-3239
埼玉県住宅都市部土地行政課 さいたま市浦和区高砂3-15-1 048-830-5488

加盟業界団体のチェック
加盟業界団体は、名簿の社名欄に並んで表示されていることが多く、業界団体に加盟している会社は、一応団体への加盟がふさわしいかどうか資格審査を受けています。研修会も義務付けられているので、ある程度信頼性を図る目安には成 ることでしょう。業界団体に加盟していれば、いざというときに業界団体に相談することもできます

現地見学
物件を絞り込んだら現地見学をすることになります。一般的に購入者は5件は見ているようです。10件以上もめずらしくありません。沢山見れば物件を見る目も養われますので積極的に見学をしましょう。
しかし不動産は複雑な要因から成り立っているので、敷地の持っている特徴、周囲の環境、法規制、隣家との関係、建物の持っている様々な条件などチェック項目は多岐に渡っています。
また図面や写真ではなかなか理解できないので、実際に完成したものを見ることが一番良いのですが、完成前の物件はモデル住宅やモデルルームを見て必要事項をチェックすることになります。但しモデルルームはインテリアデザイナーなども使って高級な家具や調度などが置かれ、オプション扱いの便利な用品も置いてあることがありますので気を付けましょう。ここはゴージャスな雰囲気に惑わされず冷静になって、本当は空っぽの部屋であることを認識し、ここにどのような家具が入って、実際の生活はどうなるのか考えることが必要です。
そして「これ!」といった物件に出会ったなら現地には朝・昼・夜・平日・休日と、何回でも行って見たいものです。
日照・騒音・交通量・汚臭・人的環境など、条件が変わると環境も変わってきます。晴天の時は南傾斜の陽当たりの良い土地が、雨天の時は水が溢れるかもしれません。

4.購入物件の最終チェック

家は人生最大の買い物。本当にその物件で良いのか家族全員で実際に動いてみて、広さや動線間取りや設備が問題ないかどうか、生活スタイルに合うかどうか最終チェックをすることになります。
資金計画についても返済に無理はないか、もっと有利なローンはないか、再度チェックしましょう。

契約前に必ず重要事項説明書をもらいましょう
不動産業者は買主に対して契約する前までに物件の重要な事項を記載した書面(重要事項説明書)を「宅地建物取引主任者」から説明をさせなければならないことになっています。
しかしこの重要事項説明は専門用語が多いため、契約の直前ではなく少なくとも契約の1週間程前に書類作成してもらい、事前に内容を把握してから説明を受けるようにしましょう。
書類をもらったら書かれている内容が今まであなたが調べた内容と異なってないかどうか確認します。もし、まだ調べてなければ重要事項説明書が正しいかどうか調査し、疑問があれば不動産会社に確認しましょう。 契約してしまったら最後、もう後には戻れません。

5.購入の申し込み・契約

物件を決めたら購入の申し込みとなりますが、10万円程度の申込証拠金が必要な場合もあります。契約前には物件概要や法律上の権利、売買の条件など重要事項の説明を受けます。 売買の内容に納得出来れば契約内容を確認し、いよいよ契約となります。

契約書の内容
契約書は「土地・建物売買契約書」などとなっており、「売買金額」「支払い条件」「物件の所在地」「面積」などが記載され、「契約約款」が続きます。

支払条件
買主は契約時に「手付金」として一定の金額を支払いますが、手付金を含め中間金・残金についても売主と買主が合意すればどのような支払い条件でも良いのです。この支払い条件にはルールが無く、原則として当事者の合意です。但し売主が不動産業者の場合、宅地建物取引業法により、売買代金の20%以下とあらかじめ決められています。

ローン特約
住宅ローンが不成立に終わった場合、契約を白紙撤回できるのが「ローン特約」です。この「ローン特約」は融資申し込み金融機関名の名前と借入金額が契約書に明記されている場合に限り有効です。

例;「A銀行B支店 金額○○○○円 ○年○月○日」

この特約があれば、融資不成立により契約は解除となるはずですが、強引に契約を成立させようという悪質業者もいます。もし「買主は、この契約締結後、速やかに表記融資申し込み手続きその他の提携ローンの手続きをしなければならない」といった条項があったら注意しなければなりません。高金利のノンバンクなどで申し込まなければ買主が違約になってしまうからです。

残金決済・引渡し
融資が下りて手付金等を引いた残りを支払うのが残金決済です。不動産売買は残金決済と登記手続きを同時に行うのが原則です。残金決済のときは買主は代金を支払って領収書をもらい、鍵の受領証にサインして権利証・印鑑証明書・委任状等、登記に必要な書類をもらい、その場で司法書士に確認してもらいます。売主の二重売買を避けるため、その場で司法書士に登記手続を依頼します。
 「登記」とは法務局に備えた不動産登記簿にあなたの名前を記入することで、名前が載るとあなたの所有権が公的に証明されることになります。

トラブルになったら
不動産取引にもクーリングオフ制度があります。但し次の2つの条件が揃っている場合だけです。

(1)売主が不動産業者であること。
(2)申し込みや契約の場所が業者の事務所でないこと

このクーリングオフが適用になるのは、購入者の自宅などでクーリングオフを説明した文書を渡さなければならないのですが、この文書を渡されてから8日以内に書面で送ることにより、契約の解除をすることが出来ます。